貸本屋

小学生の頃秋の読書週間になると 宿題として「読書感想文」を書かされるのだが
半強制的に読書などさせられるので 活字嫌いを生む温床となっていたようだ
また本を買って蔵書にするなど 「偉い先生」以外は考えられない時代であった
雑誌も今のように頻繁に発行されていた訳でもなく 小説は新聞の連載が一般的に読まれていたのである
本は学校の図書館で借りることになる 教育に支障を来すような本は一切無いと言って良い

当時の「非教育的」書籍と言えば「漫画本」である 今日のように「劇画」とか「アニメ」とか言う市民権を
得ることはなかった 「この子は勉強せんで漫画ばっかり読んでる」と言った風に目の敵にされるわけで
非常に肩身の狭い思いを「漫画」は強いられていた 学校の図書館にあるはずもなく
親にねだって買ってもらうなど出来ようはずもない
ところが「貸本屋」なる店舗が町に現れ 漫画一冊を十円程度で借りることができた
しかし一日の小遣いが十円では 駄菓子屋に行くのか貸本屋に行くのか大いに悩むところであった
それでも漸く少年月刊雑誌など買ってもらうことが出来るようになった
漫画のほかに 科学あり偉人伝ありと「教育的」側面も有し「可」と判断された訳である



その後月刊少年少女雑誌が漫画本としてのみ出版され 週刊漫画雑誌が発行され 貸本屋は
テレビが急速に普及し始め「月光仮面」の放送が始まると瞬く間に消え去った
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