SUZUKI Jimny

第二次世界大戦(太平洋戦争)敗戦後 占領軍による統制が続いたが 昭和27年(1952)中国を除く連合国と
平和条約(サンフランシスコ平和条約)が締結され 日本の主権が回復された
2年後の昭和29年(1954)高度経済成長戦略が策定され 翌昭和30年(1955)から昭和48年(1973)までの
高度経済成長期を通じて 国民総生産(GNP)が年平均10%以上という驚異的成長を遂げる
昭和39年(1964)の東京オリンピック 昭和45年(1970)の大阪万博など大型特需もあり
昭和38年(1968)には 国民総生産(GNP)が当時の西ドイツを追い抜き アメリカに次ぐ世界第2位となった
敗戦の荒廃から続く驚異的な成長は「東洋の奇跡」とまで言われたが 庶民の生活は未だ慎ましいものであった
この時代家電製品の 「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」は三種の神器と呼ばれ 急速的に家庭に普及した しかし
昭和30年(1955)スズキが「スズライト」を価格42万円で 昭和36年(1961)トヨタが大衆車と称して
「パブリカ」を価格38.5万円でそれぞれ市販したが 自動車はまだまだ「高嶺の花」であった 
この頃目につく貨物トラック以外の車と言えば外車が多く タクシーや官公庁の車であった
昭和36年(1961)の所得倍増計画 昭和47年(1972)の列島改造論を経て 昭和40年代に急速的に
国民所得が増加し インフレ経済となって成長路線を突き進み モータリゼーションが押し寄せてくる

昭和30年に「スズライト」を発売した鈴木自動車工業は フロンテ・キャリーと相次いで市場に投入
運転免許承取得人口も増加し 車を「運搬道具」から「運転を楽しむ道具」へと 変換の時を迎えた
特にオフロードファンを魅了する4WDクロカン車は 一部の高額な外車を除いては三菱ジープのみで
特にショートサイズのソフトトップ車は主に官公庁を主体とした計画生産が取られ
一般には払下げの中古車として市場に出回るものしかなく また価格も希少価値が加わり高額であった

鈴木自動車の軽4輪駆動車開発は かつては軽オート三輪の先駆的メーカーであったホープ自動車から
軽四輪駆動車「ホープスター・ON型4WD」(1967年完)の製造権を 現スズキ会長の鈴木修氏が
社内の反対を押し切り譲受したことから始まった ON型4WDは高い性能を備えた軽四輪駆動車だった
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ホープスター・ON型4WD
当時ホープ自動車は自動車製造業から撤退を検討しており
この軽四輪駆動車の設計を生かすために 他社に対して譲渡の
働きかけをしていた 当初エンジンを始めとする部品供給元である
三菱重工業に対し打診したが 既にジープのライセンス生産を
行っていた三菱からは軽四輪駆動車に対する理解を得られず
軽自動車のメーカーでパイオニア的性格を持つ 鈴木自動車に
譲渡を働きかけ これに当時の鈴木修が「軽四輪駆動車」という
当時としては奇抜すぎるほどの設計に大いに興味関心を持って
製造権を買い取ったとされる 同社幹部から多くの批判があったが
その後の展開を見れば大きな「先見の明」があったと言えよう
ホープスター・ON型4WDは ほとんどが手作業で組み立てられ
 三菱エンジン搭載が15台 検討用として鈴木自動車から依頼された スズキエンジン搭載のものが3台の
合計18台に止まるが 結果としてジムニーの試作プロトタイプ車としての役割を充分に果たした その後
「ホープ自動車」は 遊戯施設向けアミューズメントマシン・メーカーの(株)ホープとして現在も存在する

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昭和45年(1970)鈴木自動車工業は 360ccのオフロード
四輪駆動軽自動車・ジムニー(Jimny )を発表し 一躍人気車種となる
その名は「小さいジープ」という意味から <Jeep>と
「小さい」の<Mini>そして「とても小さい」の<Tiny>からなる
愛称めいた造語である しかしその構造はジープを模した本格的なもので
梯子型フレーム リーフスプリング+リジッドアクスル
タイヤは大径ラグタイヤを採用するなど 本家ジープを極力踏襲する
高剛性の車体であった エンジンは空冷2サイクル2気筒
総排気量:359cc 最高出力:25ps/6000rpm
最大トルク:3.4kg・m/5000rpm 車両重量:600kgで
発売価格は48.2万円となっている 当時のサラリーマン家庭の実平均月収は115,379円で
現在の価値基準からは大きく逸脱はしていない ジムニーは 今なお強度と耐久性を重視した
梯子形フレームを使い続け スプリングがリーフからコイルに変わっているが 前後とも固定軸を用いる
現代ではオフロード車においても車台のモノコック化 サスペンションの独立懸架採用が進んでいる昨今では
個性的かつ稀有な車であるため また悪路の踏破性能では四輪駆動車としてトップクラスの性能を持ち
クロスカントリー競技のベース車としても使用され 本格オフロード車として国内外で高い評価を得ている
40年以上の歴史を持つジムニーだが フルモデルチェンジは2回と少ない このモデルライフの長さが評価され
平成20年(2008)グッドデザイン特別賞として「ロングライフデザイン賞」を受賞している
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中津市の とある場所に放置されている廃車ジムニー
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