ぐんぢる
大阪の御堂筋は 北御堂(西本願寺津村別院)と南御堂(東本願寺難波別院)とが沿道にあるところから呼ばれる北の梅田から南の難波まで都心部を南北に走る 南北の道を筋と言い 東西を通りと呼ぶ
大阪市の代表的なビジネス街でもあり 歩道の銀杏並木は恋人達の散策道でもあった
お金がない若者は 北から南へ只当てもなくそぞろ歩く
私たち夫婦も結婚する前は季節を問わず北から南へと歩いたものである
先年30年以上も経って訪ねてみると銀杏の木は大きく鬱そうとした感があった


入社間もない頃のある日 会社の同僚が社用で御堂筋へと出かけた 初めて訪れるお得意さまの場所が解らず
公衆電話から連絡してきた 自分のいる場所すら解らない様子で 上司がなにか目印はないかと聞いたが
見渡しても同じような景色で店すらないらしい 漸く前のビルの名前が見えたと言い
「今 『グンヂルビ和同』と言う建物の前です」と言ってきた
「グンヂル・・・・・????」 少し間をおいて事務所中に聞こえる程の大声で上司が怒鳴った
「アホ!右から読むんじゃー」 「同和ビルヂングやろーが」
当然のごとくその日から 彼のアダ名は「ぐんじる」になった
御堂筋には石造りの豪壮な古い建物が多く
ビルの名前も戦前のまま 右から書いてあるビルもまだまだ健在だったのである