2021.03.23  福岡県久留米市草野町 久留米つばき園

椿(つばき)は 南西諸島から青森県までの海岸部に自然分布し 朝鮮半島南部と琉球諸島(現・沖縄)
台湾での自生が見られる日本原産の樹木である 北限とされる自生地は 青森県の陸奥湾南辺に突出る
夏泊半島北端にあり 1万株にも及ぶ群落は椿山と呼ばれ 自生北限地帯として天然記念物に指定される
また 本州中北部の内陸高地に極近縁の「雪椿」が見られるが 海岸部の「椿」との混在は見られない
日本固有種の椿は藪椿(ヤブツバキ)で 学名に「日本の」という意味の「ジャポニカ」が入り
Camellia japonica と命名され 英名でもそのまま Camellia japonica が使用される珍しい例となっている

17世紀 長崎出島に滞在したオランダ商館員のエンゲルベルト・ケンペルがその著書『日本誌』で
初めてこの「椿の花」を欧州に紹介した 後の18世紀には 動植物に造詣の深いイエズス会の宣教師
ゲオルク・ヨーゼフ・カメルが フィリピンの動植物とともに椿の種子を同地で入手しヨーロッパに紹介
スエーデンの植物学者・カール・フォン・リンネが紹介者カメルに因み 椿の属名にカメリアという名前を
ケンペルの著書『日本誌』の記載を基に「日本の」を意味するジャポニカという名前をつけた
Camellia japonica には 欧州に書籍記述で紹介したケンペル 種子を手に入れ実物を紹介したカメル
そして植物分類学に於いて学名を命名したリンネ 以上三名の学者達が関わっている

ヤブツバキは常緑の高木で成長が遅い分だけ寿命も長く 樹高が15mを超える老木も多い
花は真紅で その形状はカップ形で全開しないのが普通である
和名である「つばき」の由来は 照葉樹で葉に艶があることから艶葉木(つやばき)と言われ
それが海辺に自生することから津葉木(つばき)に転記及び転訛したとする説の他
葉が分厚いので厚葉木(あつばき)と記され それが転じたとする説などがある
植物学に於ける狭義としてのツバキとはヤブツバキのことであり 漢字を導入した際 早春に咲くことから
木偏に春と書く「椿」が当てはめられた 中国での椿は一文字では「霊木」という意味を持ち
樹木を指す場合 通常はセンダン科の香椿(チャンチン)を指し示す 実際には
ツバキのことを茶花(チャファ)というが種類が広く 日本のツバキを指す場合は「日本茶花」とする

日本では西暦733年の『出雲風土記』に椿の文字が見え その後は多くの古文献に出現するようになった
ツバキは他家受粉で結実し ユキツバキなどと容易に交配するために変異が生じやすい この性質を利用し
古くから品種改良が行われてきたが 本格的に園芸種の開発が進んだのは江戸時代になってからである
江戸時代になると世情が安定し 武士や公家及び寺社の造園熱が町中に伝播して 町民の間でも流行し
園芸交配種の開発に凌ぎを削った 江戸椿・上方椿・尾張椿・加賀椿・越後椿・松江椿・萩椿
久留米椿・肥後椿など 各藩の特色のある椿が盛んに開発され園芸市場を賑わせた
17世紀に日本から西洋に持ち出され伝わると 常緑で冬枯れすることもなく
日陰でも花を咲かせることが好まれ人気を博した
同時に西洋の美意識に基づく 豪華絢爛で大輪の花を咲かせる品種が作られ愛好された
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筑後の耳納山麓は盛んに椿の品種改良が行われた地である
推定樹齢が300年を超える大樹も健在で 多くの古木・名木が民家や社寺に保存されている
天保元年(1830)に長崎出島に滞在していたシーボルトが オランダへ接ぎ木苗を輸出し その苗を育て
普及させたドンケラールの名を採った Camellia japonica 'Doncklaeri' の母樹は 現存する「正義」と
推定されている 江戸時代から続く久留米・椿苗木の生産量は 20世紀末に全国1位となった
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久留米つばき園は 明治時代に開墾された苗木畑で栽培種や自然実生の椿が混在し
当時からあるタイサンボク・ヒマラヤスギ・啓翁桜などの大樹もそのまま生かした庭園で
ツバキの他に 樹齢100年を超える久留米ツツジやシャクナゲなどの樹木も見られる
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白玉宝珠
八重咲き・白色・中輪 千重宝珠咲き久留米椿・古種 命名:平成5年(1993)久冨瞬介
白い椿の花言葉は 「完璧な美しさ」「申し分のない魅力」「至上の愛らしさ」
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久留米玉手箱
種・群:ヤブツバキ  産地:久留米椿
ピンク色の花言葉は 「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」
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栂(ツガ)
樹高:15m  枝張り:7m  幹周り:2.4m  樹齢不詳の古木
学名:Tsuga sieboldii 別名:トガ 日本原産 本州中部から屋久島および韓国の鬱陵島に分布
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赤い椿の花言葉は 「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」
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香港満天星(ホンコンドウダン)
別名:ピンクシャンデリア 中国原産 ツツジ科 学名:Enkianthus quinqueflorus vs
花言葉は「先導」「控えめな幸福」
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乙女椿
種・群:ユキツバキ  産地:江戸椿
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桃園錦
種・群:ヤブツバキ  産地:久留米椿
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福娘
種・群:ヤブツバキ  産地:久留米椿  園内で一番多く見かけるツバキ
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利休梅(リキュウバイ)
学名:Exochorda racemosa バラ科 ヤナギザクラ属 中国原産
利休梅の由来は 茶花として広く利用されていたことから 明治末期に日本へ渡来
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尖閣ツバキ
種・群:ヤブツバキ  産地:沖縄
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標高約60mから標高10m前後の久留米市街地を俯瞰
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福娘
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Notre Dame ノートルダム
種・群:中国雲南省・唐椿(トウツバキ) 産地:アメリカ
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High Jinks ハイ・ジンクス
種・群:ヤブツバキ  産地:オーストラリア
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緋色沖の石   種・群:ヤブツバキ  産地:大阪府
もともと「沖の石」という 白地にわずかな紅色の縦絞りが入る八重咲きの花があり
それが変異したもの 「沖の石」は江戸時代からある種で 浄瑠璃外題「沖の石」が名の由来と思われる
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Dahlohnega ダローネガ
種・群:ヤブツバキ  産地:アメリカ
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以津の夢
種・群:種間雑種  産地:石川県
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Valley Knudsen バレー・ヌーゼン
種・群:種間雑種  産地:アメリカ
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Night Rider ナイト・ライダー
種・群:種間雑種  産地:ニュージーランド
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Queen Bee クイーン・ビー
種・群:種間雑種  産地:アメリカ
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Frank Houser フランク・ハウザー
種・群:種間雑種  産地:アメリカ
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シルクロード
種・群:種間雑種  産地:東京都
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Sunny Side サニー・サイド
種・群:ヤブツバキ  産地:アメリカ
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Lucky Star ラッキー・スター
種・群:ウィリアムシーツバキ  産地:アメリカ
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太郎冠者
種・群:ワビスケ群  産地:江戸椿
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ひな桜
種・群:種間雑種  産地:久留米椿
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久留米紅麒麟
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絞蓮華
種・群:種間雑種  産地:久留米椿
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加茂本阿弥(かもほんなみ)
種・群:種間雑種  産地:京上方(古くは賀茂の字が使われていた)
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都鳥
種・群:ヤブツバキ  産地:江戸椿
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South Seas サウス・シーズ
種・群:ウイリアムシーツバキ  産地:ニュージーランド
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石鎚
種・群:ヤブツバキ  産地:愛媛県
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吹上絞
種・群:ヤブツバキ  産地:久留米椿
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千年藤紫
種・群:ヤブツバキ  産地:長崎県
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屋久島原生種 ヤクシマツバキ(屋久島椿)
学名:C.japonica var.macrocarpa  分布:鹿児島県
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Betty Sheffield Supreme ベティ・シェフィールド・シュプリーム
種・群:ヤブツバキ  産地:アメリカ
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羽衣
種・群:ヤブツバキ  産地:江戸椿
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竜田錦
種・群:ヤブツバキ  産地:愛知県
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上 磨墨(するすみ)
  ヤブツバキ種 愛知県

右 Tiny Princess
  タイニー・プリンセス
  種間雑種 アメリカ
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孔雀椿
種・群:ヤブツバキ  産地:愛知県
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百合椿
種・群:ヤブツバキ  産地:京都府
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暁山(ぎょうざん)
種・群:ヤブツバキ  産地:久留米椿
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