大狐の剃刀(オオキツネノカミソリ)

学名:Lycoris sanguinea var. kiushiana ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年生草本球根植物
キツネノカミソリの変種であるため ほぼ同様の性質を持っている
彼岸花と同じように「花は葉見ず 葉は花見ず」と言われ 春先に根茎から葉をロゼット状に出して栄養分を作り
球根に栄養分が蓄積すると葉を落とす 花期には茎だけ伸ばして先端に花を付ける
日本では本州の関東以西と四国九州に分布し キツネノカミソリに比べ より標高の高い場所に自生するため
九州では山岳地帯に群生地が存在する 花弁はキツネノカミソリより大きく 雄蕊が花被から突出しているのが特徴

img

オオキツネノカミソリは日本固有種であり 特に変種名の<kiushiana>には「九州の」という意味がある
福岡県の井原山や長崎県の多良岳などが群生地として有名である

img

ヒガンバナ同様 草の全てが有毒で特に鱗茎にアルカロイド系のリコリンを多く含む
誤食した場合は吐き気や下痢 ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたるとされるが
当地では ヒガンバナの球根が動物によって食被害を受けるという 予期せぬことが発生したことがある
猟師によればシカであるとの話だがイノシシの可能性も外せない モグラやネズミに対する忌避効果はあるが
体の大きい獣の食欲には勝てないことが判明している オオキツネノカミソリの群落が縮小する要因として
土砂災害の他に この食害による株の減少も考慮する必要がある

img img

ヒガンバナ属名の Lycoris とは ギリシャ神話のネーレーイス<Nērēïs>の一人で
美しい金髪を持つニュンペー<Nymphē>でリュコーリアス<Lycōrias>と呼ぶ
ニュンペーとは ギリシア神話などに登場する精霊あるいは下級女神で 山や川・渓谷など自然界に宿り
これらを守る神とされ 一般的には歌と踊りを好む若く美しい女性の姿をしている
英語では Nymph(ニンフ)という
種小名の sanguinea(サングイネア)は ラテン語で「血紅色」を意味する形容語である

img

「狐の剃刀」の由来は 森陰の暗い何もない場所に突如現れる 葉のついていない炎のような花が「狐火」に
先が丸みを帯びた線形の葉を「日本剃刀」に見立てたとされるが
「花は葉見ず 葉は花見ず」の性質からは少し疑問が残るのは否めない

img img

花言葉は「妖艶」

 TOP
<花草木・INDEXに戻る>