2011.6.5  酒を考える No.1 「どぶろく」について

古来より日本民族が育んできた酒が危機に瀕している  日本酒離れが進み長期低迷に歯止めが掛らない
蔵元は年を追う毎に減少し 銘柄も少なくなって 幻の銘酒ばかりが増えていく
蔵元を救うべく焼酎の普及を計ったことが 皮肉にも日本酒離れに拍車をかけてしまった
田舎に来て日本酒を飲む機会が多くなった  「祭り」で一杯・「ナンヤカヤ反省会」と言ってはまた一杯
「花」が咲いては またまた一杯と よく飲むものであるが ここに庶民の「酒の飲み方」の原点がある
以前は「ケ」の毎日は今云う「晩酌」などしなかった  その分「ハレ」の日に出される酒に・振舞酒に
また金を出し合い集まっては とことん泥酔するまで酒を飲み倒すのである
この町の地酒はとにかく甘い また悪酔いもする 混ぜ物をしていると聞いたこともある 日本酒とは米と米麹
それに若干ながら醸造用アルコールが入っている物と 永く思っていたが 「純米酒」や「米だけの酒」を
口にすると疑問が湧きだして 「これが日本酒の味」だと信じていたものが もろくも崩れ去ってしまった
酒について調べてみれば 古来より明治期までは今の「純米酒」が当り前で
この酒造法を崩壊させて 日本人から本来の「米酒」を奪った者が誰なのか解ってきた
話を進める前にもう一度原点の「どぶろく」について考える

img左画像は 社団法人農山漁村文化協会発刊の 現代農業に掲載された「どぶろく法典・No.164」である
法典は別冊となり 密かなブームを呼んでいるらしい
この「どぶろく法典・No.164」から酒の話を進めていきたい 「どぶろく」の作り方はいろいろあるが 左記の方法は簡素で失敗の少ないやり方と思われる
しかし 現法規では如何なる酒類も 自家醸造してはならないと定められているので 自家醸造を推奨する物ではない 「どぶろく」は 米とは切っても切れない日本民族が古来より営々と築きあげてきた酒造法である
いわゆる日本酒とは米を原料とした酒であり その原点が「どぶろく」なのである 
どぶろくの製造工程を解説する
密造酒の代名詞のように語られるが 歴史ある酒で今の「清酒」と対局にある「濁り酒」である
仕込み開始時期は11月14日の奈良桜井・大神神社の酒祭り前後 この日が近畿酒蔵のほぼ醸造開始日となる
1 米2升5合を炊く 蒸しても良い
デンプン中の糖鎖間の水素結合を破壊しβデンプンをαデンプンに変えて糖化を促す
2 炊きあがった米と米麹2kgを暖かいうちによく混ぜる
市販麹は700〜800g単位が多いので2包分でもよい 麹はデンプンを糖に変える働きがある
麹が発見される以前は一度噛み砕いて吐き出すことで 唾液の力を借りた「食み酒」が作られた
3 (2)を甕または他の容器に入れ水3升(湧水・井戸水)を加える 室温10度ぐらいで容器は毛布一枚でくるむ
蒸した場合は水の量は多めとなる かき混ぜられる程度に適量入れること 余り神経質に考える必要はない
容器は熱伝導率の低い物が望ましい 甕のような陶器が良いが ポリバケツでも出来る
アルミのような金属容器は 熱伝導率が高く不向きである
熱湯またはアルコールで消毒しておく また最終的に7升から8升程度出来るので容量にも注意する
4 (3)にドライ・イーストを お猪口一杯分入れよくかき混ぜる
イースト菌は糖分を炭酸ガスとアルコールに分解する働きがある 清酒では酒精と言われる酵母菌が使われる
酒精が一般的に入手不可能なため 製パン材料として販売されているドライ・イーストを使用する
5 (4)を10日間毎日かき混ぜる
撹拌は酒蔵杜氏にとっても大切な仕事 手を抜かないように毎日行うこと かなり酒っぽくなってくるはず
6 10日目に米1升を炊き(または蒸す)米麹1kg(1包)とまぜ 水1升(湧水・井戸水)と共に容器に加える
イーストは不要
7 約1ヶ月間 室温10度前後で隔日撹拌 40日〜50日程度で飲み頃となってくる
少し酸っぱくなるが問題はない 酢酸菌が働き雑菌の繁殖を抑制する
室温を高くすると酢酸菌が活発となり酢になる 室温には注意し一日の気温差が少ない場所を選ぶ
北向きで直射日光が入らず暖房のない出入りの少ない部屋がよい
8 搾る
飲み進むともろみが多くなってくるので搾ると良い 蒸し器等を使い 濾布は蒸し布2枚重ね
ペットボトルに水を入れた重しで 6〜9kg程度荷重をかける
搾ったどぶろくを一升ビンに入れておくと約8〜9割程度上澄みが出来る
色は琥珀色で麹の香りも残る これが本来の酒である 注意!炭酸ガスの発生があるので密閉はしない
どぶろくの保存は難しい 火入れ法もあるが丈夫なビニール袋に小分けして冷凍するのが簡単で良い
以上がどぶろく法典・No.164による製造法の解説である
米だけで作る酒の工程は 如何なる蔵元でもこれと基本的には大差はないはず このように見ると日本酒といえどもワインと同様 年毎に米の状態・水の状態・気候等に左右され 極論であると断わっておくが厳密に言えば二度と同じ酒が出来ることはない
しかし近代の工業技術はこれを可能とした 引き替えとして多大なる設備投資が必要となり 数量確保のためアル添酒を大量生産するという「悪循環」に嵌ってはいないだろうか また純米酒など良い酒は普通酒に比べ 価格が高いことも事実ではある 単純に比較することは出来ないが 「どぶろく」は自然任せの酒造法で味覚は安定しない 原材料の米も普通米 しかも精米屑(一般に家畜・鶏の飼料として売られる)で可能である
コスト的には原材料費・1升約300〜500円程度(試算)で自家醸造可能である 酒に画一で安定した味を求める必要があるのか 我々消費者自身が考えなくてはならない事である
くれぐれも言っておく 現法規では如何なる酒類も自家醸造してはならないと定められている 自家醸造は酒税法違反である
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