2015.07.26  岡山県新見市哲西町矢田・鯉が窪の湿原

灌漑用水池の鯉が窪池の上手 標高550mに広がる湿原地帯で この地方では「さわった(沢田)」と呼び
物干竿が全て入ると云われる程の深さがあると伝えられる
高梁川の支流がある矢田谷源頭部に残されたこの湿地帯は 太古の自然が姿を留め
北方系や満州朝鮮系の残存植物や日本固有種など 300種を超える植物が自生しており
「鯉ヶ窪湿性植物群落」として昭和55年(1980)3月6日に日本の天然記念物に指定された
その面積は3.6haあり一周すると2.4kmになる 春のリュウキンカから始まって秋のスイランが終わるまで
季節ごとに違う花が楽しめる この湿原は 大正9年(1920)哲西町出身の植物学者・小坂弘によって見いだされ
大正13年(1924)には山口国太郎が踏査し 昭和6年(1931)に学会でも認められた
昭和27年(1952)に岡山県の天然記念物に指定されが その後 指定が解除され元々民有地であったため
総合商社に所有権が移転され宅地開発の対象地となった しかし 自然保護の動きが強まり 付近住民の
宅地化反対もあり商社は開発を中止 管理を哲西町に委託した 哲西町は木道や案内板を設置して
湿原の保全と整備を積極的に行い 国の天然記念物に指定され岡山県自然環境保全地域の指定も受けている
その後 鯉ヶ窪湿原は哲西町により買い上げられ 現在は新見市哲西町が保護管理にあたっている
鯉が窪池は元禄8年(1694)に灌漑用水池として構築され 安政年間に備中松山藩が改修したと記録されている
その後も2度に渡り嵩上げされ 現在では満水時面積2.7ha 受益面積27haである 溜池構築以前は
広大な湿原が存在していたと思われ 渇水期の水位低下により池畔には厚さ1m程度の泥炭質土壌が現れる
近隣にある山間の地形は勾配が緩やかで 過去 谷間には多くの湿原が存在していたと思われるが
その中で只ひとつ残された鯉が窪湿原は 貴重な植生の宝庫である
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ため池百選 鯉ヶ窪池

湿原の花
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小倉仙翁(オグラセンノウ)
大正10年(1921)に鯉が窪湿原で発見され一度は「サワナデシコ」と命名されたが 後に
明治36年(1903)熊本阿蘇山で採取された標本に基づき植物学者の牧野富太郎により新種として
紹介されたオグラセンノウと同一種である事が判明した ナデシコ科センノウ属の多年草で
朝鮮半島北部・九州地方・岡山県以西の山間部の湿地帯に生育するが 現在絶滅危惧種に指定されている
新見市と合併する前の 岡山県阿哲郡哲西町の町花であった
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備中風露(ビッチュウフウロ)
フウロソウ科フウロソウ属の多年草 岡山県の標本をもとに命名されたため「備中」の名が付く
名前の通り岡山県の山間部を中心とした地域の湿原に見られる他 広島県東部・島根県・岐阜県などでも
生育は確認されているが 絶対的な個体数の少なさから絶滅が危惧されている
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小葉擬宝珠(コバギボウシ)
リュウゼツラン亜科ギボウシ属の多年草で 北海道から九州までの広い地域に分布し
日当たりの良い湿った草原や湿原に自生する
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野花菖蒲(ノハナショウブ)
アヤメ科アヤメ属の多年草で 栽培花菖蒲の原種である 北海道から九州・朝鮮半島・中国に分布し 水辺や
湿原及び湿った草原に自生する 原種とはいえ 菖蒲園で見る野花菖蒲より 自生する花は小さく可憐である
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草連玉(クサレダマ)  別名:硫黄草(イオウソウ)
一瞬名前を聞いて「腐れ玉」を連想し なんという名前だ!と思ったが「草連」で納得
和名は マメ科のレダマに似ていることから由来する サクラソウ科オカトラノオ属の多年草で
日本の北海道・本州・九州 アジアでは朝鮮・中国・樺太・シベリアに分布し 山中の湿地に生育する
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顎無し(アギナシ)
オモダカ科オモダカ属の水生植物である 日本や中国・朝鮮半島に分布し
山間の湖沼や湿地 ため池などに自生する
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沢桔梗(サワギキョウ)
キキョウ科ミゾカクシ属の多年草で 北海道から九州に分布し 山間地の湿った草地や湿原などに自生する
通常は群生し 美しい山野草であるが有毒植物としても知られ 麻酔用の薬草として利用された例もあるが
危険度が高い 横溝正史の小説及び映画「悪魔の手毬唄」では「お庄屋殺し」と呼ばれている
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下野草(シモツケソウ)
バラ科シモツケソウ属の多年草 北半球の温帯から亜寒帯に10数種知られ 日本には5種が自生する
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禊萩(ミソハギ)
ミソハギ科ミソハギ属の多年草で 湿地や田の畔などに自生し また栽培もされる
日本と朝鮮半島に分布する 和名の由来は ハギに似て禊に使ったことから禊萩
もしくは溝に生えることから溝萩といわれたことによるとされる
お盆の花としてよく使われ 盆花・精霊花の呼び名もある この湿地帯にも多く生息する
近縁種のエゾミソハギは ヨーロッパ原産でミソハギよりも大きく日本各地に帰化している植物で
国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている
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鷺草(サギソウ) 別名:鷺蘭(サギラン)
ラン科サギソウ属の湿地性の多年草で 台湾・朝鮮半島と日本の本州・四国・九州の標高の低い湿地に自生する
深く3列した唇弁の開いた様子がシラサギが翼を広げた様に似ていることが和名の由来
山野草として栽培され増殖も安易なことから 市場に安価で大量供給されているにも係わらず
自生地での無謀な盗掘があとをたたない 手元に置きたいがための「お土産採集」「観光記念採集」が
相当数を占めていると思われ それに開発による自生地の減少も加わり 自生種が激減しているため
環境省により レッドリストの準絶滅危惧(NT)の指定を受けている

駐車場で見た花
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蛍袋(ホタルブクロ)
キキョウ科ホタルブクロ属の多年草 関東では赤紫 関西では白が多い
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藪萱草(ヤブカンゾウ)
ユリ科ワスレグサ属 太古に中国から帰化した植物
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